株式会社SNACの大島です。
この記事では「ザイオンス効果とは何か?そして広告を出し続ける意味とは?」について解説していきます。
集客やマーケティングを実践する上で行動心理学は必須になってきていますが、中でも重要と言えるのがザイオンス効果(単純接触効果)です。
このザイオンス効果を広告に応用することによってどんな効果があるのか?について学んでいきましょう。
ザイオンス効果(単純接触効果)とは?
ザイオンス効果(単純接触効果)とはアメリカの心理学者ロバート・ザイアンスが提唱した好意に関する心理効果のことで、
- 繰り返し接触することによってその人への好意が上がっていく
というものです。
ロバート・ザイアンスに関してはWikiにも掲載されてますが、「Feeling and Thinking: Preferences Need No Inferences(感覚と思考:好き嫌いに理屈は要らない)」という論文で優秀科学功労賞を受賞し、アメリカの心理学会に大きく貢献しました(映画のタイトルみたいw)。
日常で他人に好意を持つという心理にはこのザイオンス効果が大きく関わっています。
広告におけるザイオンス効果とは?
ザイオンスは広告業界では「フリークエンシー(広告への接触)」とも呼ばれますが、広告でも効果が実証されています。
広告のフリークエンシーとは?でも書いていますが
- 広告の接触(フリークエンシー)頻度によって効果が変わる
というのがあるからです。
以下の図はフリークエンシー毎の広告想起率(広告を覚えてる率)が書かれています。
フリークエンシーが4回を越えると、広告想起率が上がるのがわかります。
フリークエンシーが一定数を超えると好感度は上がる傾向にあり、広告の継続的な配信の効果が見て取れます。
Youtubeを見ている人ならわかるかもしれませんが、
- 最初は全く興味なかったけどだんだん気になってきた
とかってありますよね?
例えば僕の場合は
- LINEマンガ(例えば喧嘩独学)
- ゲームアプリ(例えばマフィアシティ)
- ライブ配信アプリ(例えばイチナナライブ)
などはYoutube広告をきっかけにインストールしました。大切なのは最初は嫌いだったはずなのに繰り返される内に好きになっていた。。。
まんまとやられました。笑
広告を繰り返し配信することには認知や好感度UPの効果があり、商品やサービスの購入率をUPすることができます。
ザイオンスは逆効果になることもある?
ザイオンス効果は広告やマーケティングにおいても度々使われていますが
- どんな状況下でも好感度は上がるのか?
というとそうではありません。
例えば以下の条件に当てはまった場合、むしろ単純接触が逆効果になります。
- 見た目が悪い
- 印象が悪い
- 生理的に受け付けない要素がある
など、ザイオンス効果は基本的に「プラマイゼロ以上の相手」に限定された効果です。
マイナス状態で接触回数を増やそうとするとマイナスが積み重なってしまいます。会社で相当嫌いな人に「今日はキレイだね」とか言われたらもはやおぞましいですよね。
無理やり接触を増やそうとしても嫌われ度数が増してしまうので注意が必要です。
広告を流し続けても反応が伸びない場合は
- 広告を変える
- 広告を流す順番を変える
- 広告を流す回数を変える(1人10回まで)
などの工夫が必要になります。
日常で接触頻度を上げても何も起きない場合なら
- 服装を変える
- 髪型を変える
- 話し方、または話の聞き方を変える
まずはプラス以上の印象まで引き上げる対策が必要になるでしょう。
ザイオンス効果が高いのは”注意深く見ている時”
ちなみに単純接触頻度が最も効果を表すのは
- 注意深くそれを見ている時
と言われています。
例えばPPC広告などでは広告は表示されるものの、検索結果に3社ほど競合が表示されることもあります。
この場合、1つのサイトを注意深く見ているわけではないので、集中力が分散し、ザイオンス効果が発揮されにくいです。
逆にYoutubeのインストリーム広告などは強制的に動画を画面上に表示できるため、PPC広告などと比べてもザイオンス効果(フリークエンシー効果)は高くなると推測できます。
対象が1つで、なおかつ他に余計な要素がない状態で視聴してもらう方が効果が高いので、Youtube広告などはザイオンス効果は高くなると言えますね。
【論文より引用】ザイオンス効果のおもしろ事例
では最後にザイオンスの研究における面白い事例をご紹介します。
【事例1】好きになると全部好きになる現象”般化”
まずは2015年の日本学術振興会(愛知淑徳大学)の実験です。
以下の文章を読んでみましょう。
従来の単純接触効果の枠組みを拡張することによって,より広範な社会現象を説明できる可能性が示されてきたのである。そこで重要なのが,般化(generalization)という概念であり,対象を拡張して一般化する過程を指す。単純接触効果における般化とは,実際に接触をした対象のみならず,未接触の対象に対しても好意度が増加することである。
注目すべきは「般化」という現象です。
これはどういうことか?というと、
- ある対象に対する好感度が上がると、その対象の属するカテゴリーすべての好感度が上がる
ということです。
例えば「彼氏が好きになると、彼氏のやってることも全部好きになる現象」みたいな感じでしょうか。
逆に炎上騒動などが起こって「芸能人って闇深いな(別に全員がそうじゃないのに)」とひとくくりにしてしまう心理もそうですね。
本来は無関係ですが、1人の騒動によってすべての印象が悪くなることもあります。
また般化という現象は、広告やマーケティングの世界でも利用されています。
実験では,白人を実験参加者として,アジア人顔写真への反復接触により,未接触のアジア人顔写真の好意度も増加した。これらの研究は,接触した刺激間での共通性の抽出,すなわち広い意味でのカテゴリ認識を経て,実際に接触した刺激に留まらず,そのカテゴリ全体へと単純接触効果が般化するという可能性を示唆している(川上・吉田,2010)。広告を例に挙げれば,あるブランドの商品広告への反復接触は,接触をした商品に留まらず,「そのブランド」というカテゴリ全体の好意度を増加させることになる。結果として,実際に接触をした商品以外の同ブランドの商品の好意度も増加する。
これも特定のブランドのバッグを好きになると、そのバッグだけでなく、ブランド全体が好きになるという効果です。
また好きになった対象に関しては接触頻度が増えれば増えるほど好ましいと感じるため、どんどん好感度はUPしていきます。
「好きになるともっと好きになり、更に好き度が増していく」って感じでしょうか。プラスの印象を与えることで、接触頻度の効果はますます高く、またカテゴリー全体に広がっていきます。
【事例2】接触回数と秒数による好感度の測定
次の事例は接触回数と秒数による好意度の実験をした論文です。
まずは以下のグラフを見てみましょう。
このグラフは同じ映像をそれぞれの秒数&回数見せた場合の好意度をグラフ化したものです。
この実験によると
- 同じ映像を3秒×4回見せた場合
- 同じ映像を12秒×1回見せた場合
の2パターンが好意度が上がりやすいということがわかっています。
3秒×4回というとYoutube広告のスキップが発生するくらいの時間なので、この辺りも考慮されているのかもしれません。
※ただこれも「集中して対象を見ている時」の心理効果なので、実際には集中してみてもらう環境においての結果となっています。
【事例3】行動の一貫性の効果
最後は行動の一貫性の効果です。
まずは以下の文章を見てみましょう。
人は言語的な情報だけでなく,行動あるいは運動からその人物のパーソナリティや意図を読み取り理解する。そして,行動の背後に存在するある種のストーリーは無意識的にも読み取ることができる。
女性がある行動(ジュースをこぼして拭く)を行っている映像を10枚の画像に分割したうえで,それらが行動の順番通り(系列呈示),あるいはランダムに10回ずつ呈示された。その後,画像に登場していた女性への潜在的好意度が測定されたところ,行動を系列呈示した場合のみに単純接触効果が生じていた。加えて,その人物の顔写真のみを反復呈示するよりも潜在的好意度は高かった。す
となっています。
つまり「一貫性のある行動や、ストーリー性のある行動を見た場合の方が相手に対する好意度が上がる」ということです。
逆にランダムでわかりにくく、理解されない情報は好意度に貢献しないこともわかっています。
マーケティングにおいて「この人色々やっててぶれまくってるよね」はマイナスに働く場合もあるし、「行動の一貫性やわかりやすさ」は好意度UPにつながるということですね。
まとめ
ザイオンス効果は広告やマーケティングだけでなく、日常生活においても頻繁に起きている事例です。
特に覚えておきたいのが
- ザイオンス効果はプラス以上の印象の場合に発動する
- 好意度が上がるほど接触効果は倍増する
- 好意を持った対象の好きなものも好きになる(般化)
- 一貫性やわかりやすさによって好意度は上がりやすくなる
などの項目ですね。
一言にザイオンス効果といっても奥が深い心理効果なので、ぜひ日常や広告マーケティングで応用してみてください。